「1408号室」短評

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ジョン・キューザック主演のスティーブン・キング原作の短編の映画化作品。

ホテルの一室が強烈な「悪意」を持っていて、一時間以内に漏れなく宿泊者を殺してしまうという部屋に泊まった作家の恐怖を描いた作品。

どんな恐怖かと言うと、大音量でラジオが鳴ったり、熱湯が出たり、壁から血が滲みでたり、こんなのは序の口で、最終的には大災害が部屋で起きたみたいにはちゃめちゃになる(という幻覚を見せられる)。

結論から言うと作品の前半は何が起こるのかわからなくて、結構怖いんだけど、後半に進むにつれてただ延々と幻覚映像を見せられ続ける感じで芸が無くてつまらない。悪意を持っているのが1408号室というモノ自体なのは作品から読み取るに明らかで、このアイデア自体は面白いと思う。しかし、何故部屋がそこまでの悪意を持つまでに至ったのなどの詳細はイマイチ描かれないのがストーリーとして浅く脆い。

キング作品の悪意というのは、少なくともこういう感じでは無い。キング作品の恐怖はもっと明確な「悪意」によるもので、それは自分が来るずっと以前からそこで待ち受けている。その邪悪さに複雑なパーソナリティを持った人間(達)が最終的に対決するのが面白いのだ。対して、今作「1408号室」では、ジョン・キューザックは人生なめきった感じのおちゃらけ演技で、つまり、いつものジョン・キューザックで、これは明らかにミスキャスト。結果、ホラー版のジュマンジとかナイトミュージアムみたいな感じになってしまっている。

まあでも、キングの原作の世界観どおりに作れば名作なりうるかというと疑問なのは「シャイニング」を例を挙げれば充分だ。キューブリック版はキングを激怒させたらしいが映画史に残る傑作なわけで。

やはり、今作は全体的に中途半端な感じなのが良くない。キング原作なら「ドリームキャッチャー」くらい世界観を再現して欲しかった。ドリームキャッチャーがどうキングの世界観を再現しているのかと聞かれると上手く説明できないが、あの感じが自分の中でのキングっぽい感じ。あの安っぽい子どもっぽさ。子どもに戻れば物音ひとつが、全てが怖くなるわけで、「it」や「ドリームキャッチャー」では大人達は大きくなった子どもとして描かれる。そういう観点から見ると本作「1408号室」はただ、幻覚を見て怖がってるおっさんの話に過ぎない。やや残念である。