「ベル&セバスチャン」短評

 




2015年公開の作品。
時代設定は1943年、ナチスドイツ占領下のフランス、アルプス地方。

血の繋がっていないおじいさんに育てられた少年セバスチャンは、家畜や人間を襲う「野獣」として、村人達から恐れられ、嫌われていた野犬ベル(グレートピレニーズ犬)と出会う。グレート・ピレニーズというのは本当にデカくて、熊くらいの大きさがある。でも、大型犬特有の人懐こい優しい目をしていて、観ているとどう見てもこいつ家畜襲ったりしないだろというツッコミが入る。基本は少年とデカいワンコの友情を描いた作品で、犬が好きならそれだけで楽しめると思う。 

この作品はそれ以外にも見所がある。一つは舞台となる広大なアルプスの大自然。空撮が使われ、単純に見ていてとても美しい。もう一つはナチ占領下の生活が描かれていること。アルプスを越えればスイスに亡命できるので、密出国しようとするユダヤ人と捕まえようとするナチ将校、さらにその間で揺れるフランス人の人間ドラマが描かれる。

ただ、全体的にドラマとして見るとかなりマイルドで、苛烈な暴力や死の描写は出てこない。文科省推薦的な、推薦図書的な「綺麗」な感じが強い。登場人物のキャラクター性も薄く、強いドラマ性が無いこともあってやや退屈な感じは否めないが、100分くらいの短い作品であることもあって、子どもと一緒に見るのにはお勧めできる作品だ。